ある漢方医のつぶやき

いぬつかひさしの備忘録

ステロイドが教えてくれたこと

昔、外科をやっていた頃、手袋負けが感作して全身に広がり、ステロイド(免疫を抑えて炎症を消す薬)を使っていました。

しかし、一番強いものを塗っても飲み薬を飲んでも治らず、夜も眠れず、心身の不調をきたしたのをきっかけに漢方の道に入りました。

たぶんストレスや不摂生が大きかったのでしょう。

その後ははたまに出る程度になり、ステロイドもいらなくなりました。

しかし、昨日の夜、湿疹が突然悪化して赤く腫れ、ただれて浸出液がダラダラ流れ、激しい痒みに襲われました。

浸出液と血でシーツが汚れないよう軍手をしましたが痒みで眠れず、あまりに辛かったので、ずっと使っていなかったステロイドを探し出して塗りました。

するとしばらくして耐え難い痒みは退き、いつの間にか寝ていました。

その夜ものすごく腹が立つ夢をみたのですが、怒りを抑えやり過ごしたところ、何もかも嫌になり消えてしまいたい衝動に駆られました。

夢の中では夢と思わないので、これが素の私でしょう。

目が覚めてそのことを思い出し、ほかに解決できる方法があるのになぜそうしなかったんだろうと思いました。

昨日までの自分に「何やってるの?」という感じです。

抑え込んでため込んできたこと、体の外へ病気が溢れ出てきたこと、昨日よりちょっと視野が開けたこと。

これもタイミングなのかと思いました。

そして、もう一つ気づいたことがあります。

困った時はステロイドに頼るのに、悪者扱いしてきたことです。

私は、漢方を通して東西医学の架け橋になりたいと思っていたのですが、「東洋医学はすばらしい。西洋医学は必要悪」という気持ちがあったことは否めず、優劣つけたがっていたのです。

二元論はいけない、すべては相対的だと人には言っていたのに…

私の使ったステロイドは最強ランクのものですが、強いステロイドほど体に悪いと言ってきました。

だけど、そのステロイドに昨日は本当に助けられました。

そこで、軟膏にありがとうと言って、悪く言ってきたことを謝りました。

すると、申し訳ない気持ちでいっぱいになり涙がボロボロ出てきました。

ステロイドだって人のお役に立つため生まれてきたはず。

しかも人の都合で作ったもの。

悪者扱いや毒扱いされてさぞ迷惑だったことでしょう。

いくら自然がいいとか言っても、自分のことしか考えないのは「わがまま療法」ですよね。

反省しました。