ある漢方医のつぶやき

いぬつかひさしの備忘録

Listen to the patient

今日、人間ドックの仕事をしていてこんなことがありました。

ある方の診察の前、看護師さんが「うるさい方なので注意してください。案内の仕方が悪いとか足が痛いのにこんなことさせるのかとか大声を出します」と耳打ちしました。

なのでちょっと構えて待っていました。

その方は70代の男性で、険しい顔で何かブツブツ言いながら入室してきました。

一応、型通り目、口、咽、首を診て聴診器で心音と呼吸音を聴き、腹部の診察をした後体調を伺いました。

すると、「初めてこんなことしてもらったよ。いつもかかってる先生はただ薬を出すだけ」と言い、いろいろ話し出しました。

食欲がなくちょっと食べても胃がはって痛むが「胃はきれいなもの」としか言われないこと、腰の手術を受けたがいまだに車イス生活でこれ以上治らないと言われていること、他にも調子の悪いところがいっぱいあることなど。

薬の手帳をみると、血圧、コレステロール、頻尿、アレルギー、血液サラサラ、痛み止め、痛み止めで胃が荒れないよう胃薬と2箇所の病院から9種類も出ています。

しかし、痛み止めも頻尿の薬も効いておらず、血圧とコレステロール値は低すぎるくらいで、ほとんどいらないというか、むしろやめた方がいいと思いました。

”Listen to the patient”

昔、ホメオパシーというエネルギー療法を学んだ時、教わった言葉です。

音楽は「聞く」ではなく、「聴く」で"Listen to the music"

治療家も、患者さんの言葉をBGMのように「聞く」のでなく、音楽を「聴く」ように患者さんの中へ入っていかなければ治療はうまくいかないということを言ったものです。

“うるさい”のを患者さんの性格といえば簡単ですが、誰にも聴いてもらえないやり場のない心の声でもあるのでは…と思いました。