ある漢方医のつぶやき

いぬつかひさしの備忘録

お灸の威力

前回、手湿疹のことを書きましたが、その後暴飲暴食で悪化したため、腹八分目にし、肉・乳製品をやめ、アルコールを控え、肌にいい温泉に行ったりしました。

すると少しづつひいてきたのですが、そこからが一進一退でなかなか治らずにいました。

そこで、思いついたのがお灸でした。

ちょっと前、妻の砂浴リトリートに来られた方が鍼灸師さんで、私の古傷の痛みを一発で治してくれたので湿疹もみてもらったところ、「三焦系(さんしょうけい)じゃないかな」と言っていたのを思い出し、その経絡の主要なツボ陽池(ようち)に灸をすえてみました。

しかし、いくらやっても熱さを感じず、13壮目で温感があり、15壮目でやっと熱が中にしみる感じがしたのでそこでやめました。

すると、翌朝目が覚めた時、指の感じがまったく違いました。

それまでむくんであまり曲がらなかった指が普通に曲がり、太さがほぼ元通りになって皺がよっていました。

皮膚も乾燥して硬くひび割れていたのが、たった一晩でほぼ普通の肌に戻り、赤みもずいぶんひいていました。

皮膚の入れ替わりは1ヶ月というのに何が起こったのでしょう。

びっくりして妻にみせると驚いており、顔もスッキリしていつもみたいにむくんでいないといわれ、自分でもまぶたが軽いのがわかりました。

これでわかったことは、それだけたくさん滞りがあったということです。

つまり、血液やリンパ液などがうっ滞して老廃物がたまり、ちょっとのことでは流れない状態になっていたということです。

先ほどの「三焦系」というのは、消化吸収した飲食物を気血水(きけつすい:体を構成する物質やエネルギー)として全身に巡らせ排泄させる機能をもつところとされ、ここの滞りが私の場合手湿疹として出ていたようです。

時々デトックスも必要ですが、普段からため込まないようにすることも大事だなと思いました。

それにしてもお灸にこんな力があるとは…

知識としては知っていましたが、実際にわかっていませんでした。

漢方の世界も現代医学的には「非科学的で認められない」ことばかりですが、事実を教科書としてこれからも学んでいきたいと思います。