ある漢方医のつぶやき

いぬつかひさしの備忘録

冷えは万病のもと

「冷えは万病のもと」って言いますよね。

あまり実感することはないかもしれませんが、漢方の診療をしていると、冷えがいろんな病気の原因になっていたり、なかなか治らない病気が冷えの治療でやっとよくなったりといったことをたびたび経験します。

冷えの原因としては、冷たい物や砂糖など体を冷やす物の摂りすぎ、ビタミンやミネラルなど燃焼を助ける微量栄養素の不足、肉や油の摂りすぎによる血液循環の障害、運動不足による基礎代謝の低下などがあげられます。

昔は、冷たい物や砂糖など手に入らず、肉や油をたくさん摂る習慣もなく、旬のものしか食べられなかったので栄養素が不足することもなく、車も掃除機も洗濯機もなかったので日常生活自体が運動で、今ほど冷え症の人はいなかっただろうと思います。

実際、古典を読んでいても冷えの治験を見ることはほとんどありません。

冷えの治療が奏功した方をご紹介します。

22歳の女性です。

5年前から月経が不順で、1年前から中間出血があり、婦人科で無排卵性月経と診断され止血剤を投与されましたが改善しないとのことで受診されました。

聞くと、食欲がなく、毎日3回くらい水のような下痢があり、だるくて疲れやすく、立ちくらみがして腰から下が冷えるといいます。

診察すると、顔色が悪く、手足がとても冷たく、脈の力がとても弱く、これらから、胃腸が冷えて消化吸収の力が落ち、エネルギーが不足して全身に冷えが及んだ重篤な状態と考えられました。

漢方では、婦人科系の病気は血流改善の治療をすることが多いのですが、この方は冷えの治療が急を要すると考え、胃腸を温め、消化吸収を助け、活力をつける附子理中湯(ぶしりちゅうとう)という漢方薬を処方しました。

すると、1週間後「食欲が出てきた。便に形が出てきた。疲れにくくなった。中間出血が減った」

1ヶ月後「正常周期で月経が来た。経血量が増えた」

2ヶ月後「普通の便になった。体重が3kg増えた。立ちくらみがなくなった。中間出血もない」と順調に回復しました。

こうしてみると、ばらばらにみえた症状も冷えが根本にあったことがわかります。

ビタミンやミネラルの不足も冷えの原因と書きましたが、これは吉田俊道さんという方の講演で最近知りました。

彼は元々長崎県の農業改良普及員でしたが、あるきっかけで有機農家に転向し、長く苦しい道のりを経てすばらしい農法に辿り着かれました。

今は環境や教育まで幅広く有益な情報を発信されており、私もいろいろ勉強させてもらっています。

参考までに彼のブログです↓