4月13日、分子生物学者で筑波大学名誉教授の村上和雄先生が亡くなられました。享年85歳。
20年前、外科医を辞め道に迷っていた頃、村上先生の代表的な著書「生命の暗号」に出会い、これから先の仕事や人生を考える上での大きなヒントを頂きました。
村上先生は、高血圧を引き起こす酵素「レニン」の遺伝子解読に世界で初めて成功した高名な学者ですが、遺伝子の研究を続けるうちに、
「これだけ精巧な生命の設計図を、いったい誰がどのようにして書いたのだろう…」
「設計図があったとして、誰が生命を作ったのだろう…」
「これだけ意味のある情報が自然に出来上がるなどありえるのだろうか…」
という問いが生まれ、人智を越えた偉大なる何者か(サムシング・グレート)の存在に気付かれました。
その上で、生命の存在はダーウィンの進化論だけでは説明できないと説かれました。
遺伝子は、情報を伝えていくため安定している必要がある一方で、変化に適応するため不変ではいられず、この相反する役割を、二者択一ではなく遺伝子のON/OFFで対応しているというのです。
つまり、自然の摂理は共存共栄で、弱肉強食や適者生存はそのバランスの中で成り立つということです。
そして興味深いのが、人の遺伝子のほとんどがOFFの状態で、眠っていた遺伝子が目を覚せば可能性は無限大ということ。
遺伝子的には「奇跡」もプログラムのうちということ。
喜び、感動、感謝、ワクワク、祈りといったものは、良い遺伝子をONにして悪い遺伝子をOFFにする働きがあるということです。
医師として、次の言葉は特に印象に残っています。
「ほとんど全ての病気は遺伝子の働きに関係する」
「遺伝子が正しい形で働かないとか、働いては困る遺伝子が働き出すのが病気である」
これを知ると、対症療法や数字合わせの医学がいかに浅いか(必要ですけどね)、考えさせられます。
そして先生は、「魂は無意識とつながっていてサムシング・グレートに通じている」とも仰います。
これは、本物のリアリストだからこそ到達しえた境地なのだろうなと思います。
科学もスピリチュアルも芸術も哲学も、すべて究めれば同じ所に行きつくのかもしれません。
最後に、私が救われた言葉です。
「遺伝子は老化しません。人間はいくつになっても自分の才能を開花させる能力をもっています」
合掌